経済産業大臣賞
概要
「安全、使いやすい、壊れない」をテーマに、内蔵センサによる接触停止機能、アームを直接操作するダイレクトティーチ、タブレット操作でアイコンをドラッグ&ドロップする直感的なプログラミングを実現した。減速機やケーブルなど主要部品の定期保守が不要で、従来定期的に必要だったメンテンスも必要なく、導入が容易である。
評価のポイント
ロボットに不慣れな企業に対してロボット導入が促進されるものと期待。
これまでの産業用ロボットに比べて大幅に使いやすさや安全性を向上させている。具体的には、@アームを直接操作するダイレクトティーチに加え、タブレット上のアイコンのドラッグ&ドロップによる直感的操作が可能、A独自に開発したセンサを各軸に埋め込み、強く当たらずとも、少し接触しただけで安全に停止することが可能、といった点が、ロボット導入の障壁を緩和するものとして秀逸な製品であると評価することができる。
総務大臣賞
- 家族型ロボット「LOVOT[らぼっと]」
[GROOVE X株式会社]
概要
ノンバーバルなコミュニケーションを採用したコミュニケーションロボット。従来のロボットのように人の仕事の代わりはせず、抱き上げた時の体温を再現し、複数のカメラやセンサー、AI(アルゴリズム)を通じ、足のホイールで移動する。人や動物の姿を模した形をしていないことで、模倣による愛着度の低下を軽減。月額でサポート料金を設定することで、本体価格を安価にし、ペットが飼えない世帯向けの需要に対応したロボットとしても活躍できる。
評価のポイント
コミュニケーションロボットとして非常に優れた技術を搭載しており、インパクトがある。ユーザーの多くが女性であることや、人間科学の視点から愛着を持てるロボットを目指していることから、新たなペットロボットの展開も期待できる。また、投資を募ってビジネスを行っている点も今後の新しいロボット産業の発展のモデルとして評価できる。
文部科学大臣賞
- 小惑星探査機はやぶさ2/小惑星探査ロボットMINERVA-II
[国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 はやぶさ2プロジェクトチーム/MINERVA-Uプロジェクトチーム]
概要
2014年に打ち上げられた小惑星探査機はやぶさ2は、2018年6月に小惑星リュウグウへ到着し、約1年半の滞在期間を通して、観測や試料回収を行った。未踏天体探査ならではの不確定性と、片道20分程度かかる遠距離通信、地上を介した異常検知と緊急離脱が間に合わない深宇宙という極限環境下で、現場で探査機自身が判断を下し、タッチダウンまでのシーケンスを可能とした。同機に搭載されていたMINERVA-IIは、微小重力天体における最適な移動方法として新しいホッピング機構を採用し、完全自律で小惑星表面の観測を行った。
評価のポイント
はやぶさ2は極限環境下での自律移動を実現したロボティクス技術であり、様々なバックアップ、パラメータ調整機能、地上シミュレーションを備えたシステムである点を評価。MINERVA-IIは極めて重力の低い環境で、ホッピングという発想で小惑星表面の観測を実現した点を評価した。どちらも科学技術の発展に大きく貢献するものであり世界に誇る技術といえる。関連事業のさらなる挑戦を期待する。
厚生労働大臣賞
- 移乗サポートロボットHUG T1-02
[株式会社FUJI]
概要
介護の現場において、ベッドから車椅子、車椅子から手洗い場といった座位間の移乗動作や、脱衣場での立位保持をサポート。過去の同社製品からデザインを一新し、価格・操作・装置重量を改善し、使い勝手の良い製品となった。介護施設、在宅介護両面での活躍を想定している。
評価のポイント
介護負担の軽減のテーマの一つとして、「移乗支援」が今、非常に重要となっている。本機は高齢化による代表的な課題の一つである排泄介助用の機器として顧客の主たるニーズである軽量化、使いやすさを細部に至るまで検討し、数多くの工夫を盛り込んで市場から高い評価を得ている点を評価。排泄介助は現場での強いニーズがあるにもかかわらず、現場で比較検討される競合製品もほとんどないことから今後も引き続き導入が進んでいくと考えられる。
農林水産大臣賞
- 自動野菜収穫ロボットとRaaSモデルによる次世代農業パートナーシップ
[inaho株式会社]
概要
自動野菜収穫ロボットを開発し、RaaS(Robot as a Service)モデルによる農業者向けサービスを提供。ロボットを農業者へ貸出し、収穫高に応じて利用料を支払ってもらうビジネスモデルを実現した。初期費用・メンテナンス費用の負担を不要としており、貸出しからメンテナンスまでをサービスとして提供している。
評価のポイント
ユーザーである農業者のニーズを丁寧に聞きながら、成長度合に応じて人の目で一つずつ判断する必要があった野菜の自動収穫にチャレンジしている点、また、農業者の導入初期コストを低減させるサブスクリプションのビジネスモデルを評価。スタートアップ発の農業ロボットの普及に、大きなイノベーションを予感させる提案であり、今後の展開が大いに期待される。
国土交通大臣賞
- トンネル覆工コンクリート自動施工ロボットシステム
[西日本高速道路株式会社/清水建設株式会社/岐阜工業株式会社]
概要
トンネル覆工コンクリート自動施工ロボットシステムは、打込みノズル切替えにマニピュレータ方式を採用したことで、従来施工では人力で行っていたコンクリート投入配管の盛替作業を、マニピュレータ方式を持つロボットにより自動化した。またスライド型枠の検査窓から投入していた生コンクリートを、吹上げ方式で投入する新しいシステムである。
評価のポイント
トンネル覆工コンクリート打込みは作業現場では非常に負担の大きい作業であり、完全自動化は初の試みである。中流動のコンクリートを吹上げ方式で打込みする点、枠組自体を分散加振器で安定的に加振する点、分散圧力センサによって打込みのセグメントごとの完了を検出できる点などに新規性がある。複数のトンネル工事で実績もあげている。作業員の確保が難しいことに対応し、作業量を減らすだけではなく、工期も減らしながら品質を高く安定化させている。
中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)
- 協働運搬ロボット「サウザー」シリーズ
[株式会社Doog]
概要
従来のAGVと同様のライン走行に加え、自動追従機能とメモリトレース走行機能を備えた製品。自動追従走行では、前に立っている人をLiDARにより認識し、人を追尾して走行する。障害物も回避しながら、どこでも作業者についていくことができ、複数のサウザーを連なって追従走行させれば、柔軟に運搬量を拡大できる。さらに、メモリトレース走行機能は、追従して走行した経路を記憶し、トレースすることで自律走行が可能である。
評価のポイント
狭い場所での稼働や人を見分けて追従できる、などの機能を有している。また、同社とユーザーを繋ぐ役割を担い、ユーザーの要望に合わせたシステム提案・構築を行う複数の企業と既に連携しており、ユーザーに合わせたカスタマイズを実施する体制がうまく機能している。
日本機械工業連合会会長賞
- 製造業における部品調達のデジタル革命、「meviy」(メヴィー)
[株式会社ミスミグループ本社]
概要
製造業における加工部品の調達を効率化するECサービスであり、利用者は設計データをアップロードするだけで、AIが形状を認識し、即時に見積もりを実施、そのまま部品を加工して最短即日に出荷するという革新的なものづくりプラットフォーム。今まで膨大な時間を費やしていた部品調達に関わる時間を劇的に削減、ものづくり産業全体のスピードを加速させることが可能となる。
評価のポイント
日本の製造力強化、労働生産性の向上といった社会的ニーズに対し、大きな足かせとなっていた調達プロセスを劇的に改善するシステムである。日本一のシェアと売り上げ実績がある。
部品点数が多く、特有の部品を設計する必要性が高く、試作が繰り返されることが多いロボット領域には極めて有用な仕組みである。競合他社に対して、設計・製作3Dデータの標準化という点で大きくリードしており、ものづくり・ロボット産業の競争力に大きな貢献をする標準プラットフォーマとしての貢献が期待できる。
日本機械工業連合会会長賞
- 自律移動型警備ロボットSQ-2
[SEQSENSE株式会社]
概要
独自のセンサー技術や画像認識技術などを持つ自律移動のセキュリティロボット。人手不足が深刻な警備業務を人に代わって、もしくは人と分担して行うことを可能とする。独自の3Dライダーを搭載し、警備対象物件の詳細な3次元マッピングや自己位置推定、移動歩行者をはじめとした動体の発見、環境の変化を検出することで、人と共存する環境でも非常に高精度な自律移動性能を持つ。
評価のポイント
ビル警備は通常、警備員が目視で非常に多くの細かい箇所を点検していることから、従来の警備ロボットでは確認しきれない多くの場所があった。本機では、視野角の広いカメラでそれらの確認ができる。不動産企業との連携もあり、将来のビジョンもしっかりしていることから、ビル警備会社への導入が加速することが期待される。
優秀賞(ビジネス・社会実装部門)
- 次世代薬局ロボ(薬剤自動管理)と自動薬剤受取機、デジタル・シェルフOTC販売で「患者のための薬局ビジョン」実現
[日本ベクトン・ディッキンソン株式会社(日本BD)]
概要
薬局にて調剤を待てない患者は、薬局壁に据付けられた自動薬剤受取機より、開局の有無にかかわらず薬の受取ができることを実現。薬局での感染リスク低減にも貢献でき、オンライン診療、服薬指導とのシナジーも想定している。また、個々人がOTC医薬品で健康管理が求められる場面で薬剤師等の服薬相談をデジタルサイネージでサポート。服薬相談に必要な情報を手元に、接続されるロボットよりクリックひとつで商品を手元に払出しできる。
評価のポイント
ハードウェアおよび基本ソフトウェアについてはドイツ企業の製品である。しかし、この製品をベースとして、日本の調剤薬局に特有のワークフローを解析し、店舗の薬剤師とシステムの共同作業としてソリューションに落とし込んでおり、独自性がある。イノベーションが従来起こりづらかった分野での提案であることから、今後の社会実装への期待を込めて評価した。
優秀賞(介護・医療・健康分野)
- 研究用マウス飼育自動化システム「RoboRack」
[グローバル・リンクス・テクノロジー株式会社]
概要
本機は、研究用マウスの飼育について、これまで人手で行っていた@ケージの交換作業A敷材の交換B餌や水の補給を自動化している。研究用マウスの飼育を行う場合、飼育環境にも配慮した対応が必要であるが故、飼育を行う研究員には、精神的にも肉体的に過度な負担がかかっている。本機は、研究用マウスに過度なストレスを与えないようにしつつも、これまで若手の研究員が中心となり手作業で行っていた研究用マウスの飼育を自動化し、過度なストレスを与えない飼育環境と飼育者の安全・安心の確保を両立することが可能となるものである。
評価のポイント
研究機関・大学などの研究員の負担である「マウスの飼育」を、マウスへの負荷を減らしつつ自動化することで実験動物と人の接触リスクの回避、実験範囲や対象規模の拡大、さらには新たな実験体制の構築を提案するものである。作業時間を有効活用できることで研究の加速が可能となることから、今後の展開が期待できる。中小企業ならではの強みを生かし、ターゲットユーザーのニーズにきめ細かく応え、開発を完成させた点も評価できる。国内では年間約1千万匹の研究用マウスが必要とされていることを踏まえると、重要なシステムであると評価。
優秀賞(農林水産業・食品産業分野)
- 農機向け後付け式の自動化システム
[株式会社トプコン]
概要
自動操舵システムとは、位置情報を基に事前に設計した走行ラインからの離れ量を計算、その差分を戻すように農機のハンドルを自動で制御させるシステムである。現在国内で販売されている自動操舵システムは大きく二つに分類され、一つは農機に最初から取り付けられているシステムであり、本製品はもう一つの既に所有している農機に後付けするシステムである。
評価のポイント
後付け式の自動操舵システムは既存農機に使用できるメリットがあり、複数の機械で使い回しが可能で、1台の自動操舵システムで多くの作業に活用でき、北海道を中心に普及が進んでいることを評価。また、マップ機能を用いた可変散布、生育センサーに基づいた可変施肥などのセクションコントロール機能を備えた作業機との連携も農業者にとって有用である。
優秀賞(社会インフラ・災害対応・消防分野)
- 建設機械の自動運転を核とした次世代建設生産システムA4CSEL(クワッドアクセル)
[鹿島建設株式会社]
概要
従来の情報化施工や建設機械の遠隔操作による無人化施工等とは異なり、作業データ(いつ、どこで、何を)を送ると、自動化建設機械が自律・自動運転で作業を行う。原理的には一人で何台の機械でも同時に稼働させることを可能とした、全く新しい建設生産システムである。
評価のポイント
成瀬ダムでの作業では、23台の重機を自動化して作業を行った。人手不足で作業人員が減少する中、自動化の取り組みにより少人数で作業を可能とした取り組みはほかになく、他社よりも先駆けて実用化を実現している点を評価した。
優秀賞(研究開発部門)
- 高速道路のトンネル覆工コンクリートにおける時速100km走行での4K高解像度変状検出システム
[東京大学・中日本高速道路株式会社]
概要
高速道路の点検において、高速カメラ、高速画像処理及び回転ミラーなどの高速光軸制御動作により、時速100km走行時に生じるモーションブラーをリアルタイムに補償し、静止時と遜色ない鮮明な4Kレベルの高解像度・高分解能画像を連続して取得可能である。特殊車両を必要とせず、普通車両の上部に市販のルーフキャリアを利用して装置を着脱可能であることから、搭載車両が通常巡回するだけで点検可能な製品である。
評価のポイント
研究開発に留まらず、すでに高速道路での実証実験を進めている。一般のパトロール車に搭載し、車線規制が行われていない通常の状態の高速道路上を100km/hで走行しながら、定められたクラックを鮮明に捉えることに成功している。高い可能性を秘めた技術およびアプリケーションであり、実用化への期待を込めて評価した。
審査員特別賞
- 母船レス海底調査を可能とする洋上・海中ロボットシステム
[Team KUROSHIO(海洋研究開発機構、東京大学生産技術研究所、九州工業大学、海上・港湾・航空技術研究所、三井E&S造船株式会社、日本海洋事業株式会社、株式会社KDDI総合研究所、ヤマハ発動機株式会社)]
概要
海底観測に用いられる海中ロボットは、一般的に有人支援母船により海域まで輸送・投入され、母船から音響通信で管制される。探査をさらに拡大するため、数に限りがある有人支援母船を用いることなく、海底観測をロボットのみで行う母船レス海底調査システムを開発した。
評価のポイント
海底観測はまだ調査が進んでいない海域も多いが、今までは高額なシップタイムとAUV運用が可能な母船の調達が難しいという問題があった。本システムにより、母船無しに調査が行えることを示した意義は大きい。本技術が発展することで、同時に複数台の海中ロボットの稼働が期待できる。XPRIZEコンペにおいて、ギリシャ沖等、まったく経験のない場所で本システムを用いた探査、詳細な地図作成に成功し、世界2位(準優勝)を獲得した。膨大な規模の海底調査の効率化により新たな資源の発見などに貢献する可能性が高い点を評価した。