HAMDAS-R(ハムダスR)
[株式会社前川電気]
概要
豚もも肉から自動的に骨を取り除くロボット。豚もも肉は個体差によるバラツキが大きく、自動化は困難とされていたが、X線認識システムなどにより骨のサイズおよび形状を認識することで、一連の作業を自動化できるようにした。
評価のポイント
食肉工場における技能者が減少する中で、手作業の技をロボットで再現する工夫を凝らすことにより、人手と変わらない高い作業効率を実現したことが評価され、「中小・ベンチャー企業賞」の受賞となった。
世界初のナイフを持った自動除骨ロボット
肉から骨を取り除くロボット/人海戦術の除骨作業
HAMDAS-Rは、骨がついた状態の豚もも肉から骨を取り除く処理(除骨)を自動で行うロボットです。 時間当たり最大500本のもも部位を自動除骨処理する能力があり、骨長さの個体差は100mmの範囲ではらついても許容することができます。また、右脚・左脚をランダムに供給することにも対応しています。 最大の特徴は、ナイフで骨に沿って切る「筋入れ」工程を自動化したことです。この筋入れ作業は、複雑な3次元形状で構成された骨や筋組織の境界に沿って切る必要があり、正確に除骨作業を行うには熟練した技術を要します。また、個体ごとに大きさ、肉の付き方、骨の太さ、ねじれ方などが異なるため、個体差に対応した柔軟な切り方が求められます。 HAMDAS-Rは、職人技のコツを処理手順や動作、機構に取り込んで、除骨作業の自動化を実現しました。
食肉加工工場では、人海戦術の生産体制が一般的になっていますが、重労働と厳しい労働環境から、人材の確保や定着率低下の問題が深刻化しています。さらに、この影響で技能伝承が効率的に進まないため、加工技術レベルを維持することが難しくなっており、自動化・労働形態の改善が望まれています。 一方で、食肉のように、軟らかく、形状や状態が一定でなく、個体差も大きい、いわゆる不定形軟弱体の処理・加工工程は、作業者が経験によって取得した技能とフレキシブル性に依存しているため、自動化の難易度が高く自動化が進んでいません。
自動処理風景
職人技の自動化
不定形軟弱体の処理を自動化するために、熟練した職人の技に学び、それを機械、制御方法に取り込みました。
①柔軟性のあるカットツール(エンドエフェクタ)
骨の周りはやわらかいクッションのような肉で覆われているため、ナイフで骨に沿って切っている間にも、骨の位置は時々刻々と変化していきます。そのために、ナイフが骨からずれたり、骨に食い込んでしまったりすることがあります。 職人はナイフから手に伝わる負荷でカット状態を判断しながら作業を行い、違和感をもつと瞬時にその状況に応じた反応をナイフに起こしていると考えられます。 これと同様の機能を付加するために、ナイフを左右に往復動させることと刃角度を回転させることができる柔軟性をカットツールに設けています。
②高速での安定処理
時々刻々と変化する骨の位置に合わせて動作ラインを修正しながら、複雑な形状を高速でトレース(カット)することを実現するために、あえてカットツールにはセンサを使用せず、カメラから機構でナイフの動作をさせました。状況に応じた適切な反応動作を高速で行うことが可能となります。
③職人と同じ処理手順で高品質の肉を生産
熟練した職人は、要所のみを切りながら、効率よく肉から骨をはがす動作を行います。また、1本のナイフの動かし方次第で様々な作業をこなしてしまいます。 HAMDAS-Rは、職人の処理手順、方法、動作を機械に適した動作にして、筋肉の組織に傷がない高品質な肉を生産することを実現しました。
処理工程
導入メリット
①省人効果 従来、20人で行っていた除骨作業が、10人で行えるようになります(500本/時間)。よって、10人の省人効果を得ることができます。重労働からの解放と、作業者確保難、定着率低下の問題解決に貢献します。 作業者定着率などの問題から技能伝承も難しくなってきており、今後の生産効率・肉品質の低下が懸念されていますが、ロボット化により一定のレベルを維持し続けることが可能となります。さらには、労働災害のリスク低減にも貢献することができます。②高速安定処理 HAMDAS-Rは、500本/時間の処理能力を達成しています。安定した処理能力は、生産計画を立てやすくします。 ③高品質の肉 職人と同じ処理方法を機械化することで、傷のない高品質の肉を生産することができます。 ④衛生管理 HAMDAS-Rは、食品処理・加工エリアで使用するために、衛生・洗浄・防錆を考慮した構造になっています。 HACCP(危害分析重要管理点)の衛生管理においても、ロボットを導入した工程では、ロボットだけを管理すればよいので、多くの人を管理することに比べて、管理対象を絞ることができます。
自動処理後の豚もも肉と骨
食品処理・加工市場へのロボット化展開
食品業界全体をみると、特に食品処理・加工工程は、手作業に頼るところが多く、自動化が進んでいません。この多くは不定形軟弱体を処理・加工の対象としている点で共通しています。 また、この工程は、洗浄性、衛生性などへの対応が必須となり、特殊な使用環境になります。 HAMDAS-Rの実現が、食品処理・加工市場へのロボット化の可能性を広げるものとなり、この市場に広くロボット化が展開していくことを望みます。