無軌道自律走行ロボット「血液検体搬送ロボットシステム」
[松下電工株式会社]
概要
ロボット誘導のためのガイド線を不要にした無軌道自律移動技術を生体臨床検査の搬送作業に高度応用したロボットシステム。血液検体をストッカーから受け取り、複数の血液検査装置へ分配、検査後は回収ストッカーに戻すという一連の作業を、複数台の自律ロボット群が行うものである。また、自動充電システムにより、電池残量に応じて各ロボットに適宜充電がおこなわれ、群全体としては24時間の検査要求へ対応している。無軌道での群制御、精密なドッキングシステム、自動充電システムを実用化することで、病院や臨床検査企業において現在17台が導入されている。これからさらにニーズの高まる医療・健康産業を支える臨床検査作業は、正確さとともに、納期厳守で夜間に集中するため、ロボット導入による信頼性向上、効率化の効果は大きい。
評価のポイント
一連の搬送業務の自動運転と群制御
本ロボットシステムの技術的特徴は以下の通りで す。 ①病院内搬送ロボットHOSPIから引き継がれた『無 軌道自律移動技術』 (無軌道誘導と障害物回避) ②物流量対応とリスク分散を目的とした『群制御』 ③荷物の高信頼の自動受け渡しを実現する『精密 ドッキング技術』 ④24時間自動運転を目的とした『自動充電システム』 特に最大10台の自律ロボットを合理的に自動運転 できる群制御技術、さらに10台以上の血液検査装 置や複数台の自動充電装置とも連動運転する技術は、他に実用例の無い、先進的な特徴です。 群制御装置は各ロボットの位置や状況(運搬中・非運 搬帰還中・充電中・トラブルなど)を把握し、各装置か らの搬送要求を総合して、適切なロボットに指令を 出します。さらに、多数のロボットが集中し渋滞しな いようロボットの走行制御を行います。ロボットは、 局所的な周辺状況を認識しながら他の設備やロボッ トに衝突することなく目的地へ進みます。つまり、大 局的制御戦略(群としての知能)と局所的制御戦略 (ロボット単体の知能)のハイブリッド方式をとって おり、この2つの戦略(知能)を、実運用でのフレキシ ビリティーと安定稼動を両立させるという目的に対 して最適な融合を図っています。
医療・健康産業を支える高い品質基準と連続稼働/経営目的に貢献できる信頼性と安全性の確保
本血液検体搬送ロボットの基礎となっている無軌道 走行技術を搭載したロボットは、2005年3月に岡山 市の榊原病院に薬の搬送を目的として2台が導入さ れ、現在まで休日以外毎日活躍しています。これはエ レベータへの自動乗降を含め、高度な自律移動技術 の第1の実用例となりました。次に、2006年10月 に臨床検査会社(株)ビー・エム・エルに15台のロボッ トが導入されました。臨床検査は、今後の日本の文 化経済を支えるになくてはならない医療・健康産業 のひとつであるが、納期厳守かつ夜間に集中する検 体検査業務は労働者にとっては神経を使う過酷な作 業です。 業界基準のない自律移動機能については、既存の 安全規格やAGVの規格の参照はもちろん、徹底し たリスクアセスメントを通じて自ら品質基準を設定。 厳しい評価試験をクリアして販売しました。臨床検査 会社では、2006年10月稼動開始以来、日曜休日以 外の毎日、事業の基幹システムとして搬送作業をこ なし続けています。
来るべき少子高齢化社会においては、労働力の相対 割合が減少するため、製造・サービスのあらゆる産業 で生産性の向上が求められる時代になると考えまし た。そのため、ロボットが人と共生し、現状人が行っている仕事の機械的作業部分を肩代わりできる能力 をもつこと、動作環境の変化にも自分で考え仕事を やり遂げるよう従来のロボットより格段に高度な自 律制御技術が必須と考えました。 しかしながら、このような高度な技術を高信頼に安 定的に発揮できなければ事業とすることはできな い。そのため、ユーザーベネフィットとして最低限確 保したい要件、現場の使用条件、さらには引渡し価格 について、メーカー側とユーザー側で鮮明な一致点 を見るまで熱心に議論を重ねました。メーカー側は、 ユーザーの期待を裏切ることのないよう、営業、法 務、製造、品質、広報さらにはリース会社、メンテナン ス会社などあらゆる部門のベクトルのそろった協調 が必要でした。 また、市場創出のためには、デモや実証段階を脱却 し、顧客の経営目的に貢献する道具として購入され 使い続けられる信頼性と安全性を確保することが最 重要であることを認識しました。さらに、市場を拡大 するには、販売後のロボットに対する価値観が低下し ないよう、ユーザーとメーカーが一体となって性能 を維持しながらお使いいただくことと、販売の成功 事例の継続的積み重ねが肝要と考え、それが可能な 体制を構築しました。
確実なフィードバック改善
実用化の成果を都度、広報することにより、多用な 用途の引き合いをいただいていますが、導入後の ご使用期間中、事故無く機能やメリットを享受いた だく責任が継続することを認識し、拙速な拡販を慎 んでいます。 実用化の中で判明する要改善点をフィードバック し、先端技術をよりよい形でご活用いただくべくス テップバイステップでの販売と用途拡大を予定し ています。 技術面では、環境に適応する知能ロボット技術が、今 後の社会のニーズに応えるロボットのキーになると いう認識で、引き続き、これを技術面の軸にして進め ていく方針です。