知能化組立ロボット「Fシリーズ」
[三菱電機株式会社]
概要
知能化技術を実装したロボットに、力覚センサや3次元ビジョンセンサなどを組み合わせた知能化ソリューションとして提供することで、力覚制御やバラ積みピッキングなどを利用しやすくした。また同社では、これらを活用したサーマルリレー組立セルなどを構築し、導入を進めている。
評価のポイント
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構による委託事業の開発成果をパッケージ展開することで、高度な知能化技術を扱いやすくしたことに加え、これらを活用したロボットセル(ロボットによるセル生産)により複雑な組立作業が行えることを示し、変種変量生産に対応するロボットセルの可能性を広げた点が評価された。
次世代組立セルを支える知能化ロボット
激変する生産現場
現在、モノづくりの現場では、生産・消費のグローバル競争、多様 化するユーザーニーズ等、日々変化する課題への対応が求められ 続けています。 近年では新興国への工場進出の動きが顕著となる一方で、人件 費高騰、労務管理問題などの社会構造変化により、安価で大量な 労働力に基づいたローコストオペレーションモデルが崩壊し、自動 化ニーズが急速に高まってきています。また、電気・電子分野などの 組立ての製造現場では、従来よりも一段進んだ変種変量生産が可 能なセル生産方式が注目されてきています。しかしながら、熟練工 の退職や少子高齢化による就業人口の減少が進行中であり、これまでの人セル生産に代わり、従来は実現が難しかったロボットによ るセル生産の実現が国内外で求められるようになってきました。
従来の生産形態(左:ライン生産、右:人セル生産) NEDO次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト実証機
ロボットが活躍する組立ての現場へ
「次世代のモノづくり力を支えたい」、三菱電機では、従来の自動 化ライン生産の高生産性・高信頼性と人によるセル生産の柔軟性・ 簡便性・省スペース・低コストを併せ持つ変種変量生産に適した「知 能化ロボットによるセル生産」の実現に向け、2005年より当社製 品の生産現場を対象に社内開発プロジェクトをスタートさせました。 この取り組みでは、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)委託事業(2件)およびオープンイノベーション戦略に則 った複数大学(京都大学、名古屋大学、北海道大学、富山県立大学) との連携活動を実施してきました。また、開発者自らが実証セルの設計、製作、立上げ、運用を実施することにより、課題の抽出だけで なく、開発技術の実証、研鑽を行うというこれまでにない開発アプ ローチにより、完成度の高い技術開発を目指しました。
従来の生産形態(左:ライン生産、右:人セル生産) NEDO次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト実証機
開発した知能化技術の特長
本開発プロジェクトの中で顕在化してきた以下の(1)~(3)の3 つの課題に対して、主に①~⑥の知能化技術を開発しました。 (1)部品の効率的な供給 ①バラ積み部品供給のための小型3次元ビジョンセンサと 高速計測・認識機能 (2)立上げ時間の短縮 ②複数ロボット間における高速干渉回避機能 ③治具レス組立に適した高精度複腕協調制御機能 ④効率的教示のための力覚センサ情報提示機能 (3)部品のばらつきに対する柔軟性 ⑤安定組立のための力覚センサを用いた高速倣い制御機能 ⑥安定作業のための力覚センサによる力制御機能
サーマルリレー組立セル/「MELFA Fシリーズ」による開発技術の展開
モータの過負荷による焼損防止等を目的とするサーマルリレー は多数の機種ラインナップを持つ製品です。このため、生産量が少 ない機種では、これまで主として人セルによる変種変量型の組立 が行われてきました。今回の対象製品では、16種類、34個という 多数部品を扱う必要があり、従来の部品供給装置や専用組立治具 を用いる設計では、費用・面積・設計時間の増大を招く問題がありま した。今回、社内適用に向け、ロボット知能化技術に加え、電動ハン ドを用いたフィンガーチェンジ機構や簡易ネジ整列機構の開発も 盛り込 ん だ サ ー マ ルリレー 組 立 セ ルを 構 築し、省 面 積 (W:1.7×D:1.5×H:1.2m)で従来型セル設計に比べ、費用と立ち 上げ時間をいずれも7割程度に抑えながら、人セル以上の生産能 力注1(月産約2500台以上)を実現することに成功しました。 注1:自動化による稼働時間拡大効果を含む
開発した知能化技術は2011年11月より発売が開始された 「MELFA Fシリーズ」ロボットの制御コントローラ上のソフトウェア として標準搭載されており、協調制御、干渉回避機能などのソフト ウェア機能を標準で用いることができます。さらに必要に応じてオ プションハードウェアである力覚センサ、3次元ビジョンセンサ、多 機能ハンドを導入することで、さらに多くの知能化技術を利用し、ロ ボットによるセル生産システムを簡単かつ迅速に構築することがで きます。また、ユーザーが必要な機能をすぐに立ち上げられるよう に必要なハードウェア・サポートソフトウェアをパッケージ提供する とともに、新たなサンプルソフトウェアを随時提供できる体制を整 えています。 今後も日々変化する市場に対応した技術進化を続けるとともに、 モノづくりの世界がさらに広がっていくことを期待しています。