注射薬払出ロボットを起点とした薬剤業務支援ロボット群
[パナソニック ヘルスケア株式会社 パナソニック株式会社]
概要
病院業務の一つである複雑な薬剤業務を支援するロボットシステム。薬剤の選び出しと病院内の自動搬送を行う。これらの作業支援により、服薬指導などの人でしかできない業務に薬剤師が集中できるようになる。
評価のポイント
病院全体をロボットシステムで自動化し、複数ロボットを用いて作業を効率化することで、病院サービスの効率と質の向上を目指す取り組みが評価されました。
薬剤部まるごとロボット化-人とロボットとの効率の良い労働分担-
病院内における薬剤部業務の現状/薬剤部業務をロボット化へ
現在の病院内における薬剤業務とは、医師の処方に基づいた薬剤の取り揃えを行い、その薬剤の鑑査を行った後、搬送を行い、患者様へ投薬を行うという流れで行っています。 設置スペース等が限られる、200~400床程度の病院では、大型の注射薬払出ロボット等を導入することが困難であり、薬剤師自身が取り揃えから、病棟への搬送まで行っているのが現在の医療の現状です。 薬剤部における薬剤の種類は、1000種類を超えており、病院入院患者様をメインとした注射薬だけでも、約300種類はあります(病院により数は変動します)。これでは、薬剤師は、処方に基づいた薬剤を取り揃えるだけで、多くの時間を費やし、患者様への服薬指導など、患者様に有効で安全な薬物療法を提供するために行うべき本来の業務に手が回らないのが実情です。
そこでパナソニックは、薬剤部の業務補助を目的とした、アシストロボット群を開発しました。これは薬剤部業務における注射薬剤の取り揃え業務を行う、“注射薬払出ロボット”と鑑査後の薬剤を各病棟へ自律搬送行う“自律搬送ロボットHOSPI”から成ります。
薬品の破損率5万分の1を実現/省スペースを実現した注射薬剤払出ロボット
注射薬払出ロボットは、業界でも最高レベルの薬品破損率5万分の1を実現しております。注射薬はアンプルやバイアルという名称の非常に割れやすいガラスビンに入っています。この注射薬は、始め注射薬払出ロボット内の専用カセットに充填されており、そこからロボット機構にて専用ポケットにピッキングを行います。このカセットからポケットに出しピッキングを行い、薬品は破損の危険を生じますが、パナソニックは、薬品を転がすことで、極めて優しく薬品をピッキングするソフトハンドリング機構を実現しました。
また、この注射薬払出ロボットは、業界最小レベルの設置スペースである:幅2,675mm×奥行き750mmを実現しました。 これは前述しました、スペースに限りのある200~400床の病院に設置頂けることを目的としています。 注射薬は前述のロボット機構にて専用ポケットにソフトハンドリング機構にてピッキングされます。その後、パナソニック独自の薬剤払い出し機構を導入することで、省スペースでの注射薬用トレイに払い出すことが可能となります。さらに、投薬情報を記載した注射箋を装置内でトレイに払い出し、装置内で注射薬払出し業務の一連の作業を完結することができます。
自動搬送を実現した自律搬送ロボット
HOSPIは走行経路にレールや誘導ガイド線を必要としない、自律誘導技術を用いた搬送用ロボットです。予定経路上に障害物があっても自動的に回避し、搬送目的地に向かって走行します。目的地や経路をフレキシブルに変更できるメリットがあり、病院だけではなく検体検査会社などに導入され始めており、汎用性が高いことを認められています。 ロボットの背面には、ID認識された者に限り開錠できる扉つき収納庫を備えており、収納した薬剤が搬送中に、いたずらをされないように守ります。 また、人々のくらしにとけこむために、シンボリックな表情を表現する「顔」を表示し、親近感を感じさせるメッセージを発しながら走行します。通常、病院は多層階となっており、薬剤調剤室は1階または地下1階にあり、そこから薬剤を上層階の病棟などに運ぶ必要があります。この搬送作業は、看護師や薬剤師の本来業務を中断させるため機械化が強く望まれる作業です。 HOSPIはこの搬送作業を代替するものであり、特に職員が少なくなる夜間は手が回らないことが多くなるため、HOSPIが効力を発揮します。 また、HOSPIは、誘導するためのレールやガイド線を敷設する必要がないため、床や壁などは現状のまま美観を保ち、維持に気を配る必要もありません。
HOSPIのその他の機能/病院内まるごとロボット化へ
HOSPIには各階に搬送するため、自動的にエレベータに搭乗する機能も用意しています。また、病院のあらゆる場所に移動するHOSPIを安心して運用するために、無線LANにより現在位置や状態をウォッチし、加えてHOSPIに搭載したセキュリティカメラにより捉えた映像を、拠点となる部屋でモニターする機能も備えています。 将来的には薬剤だけでなく、カルテや検査器具、検体などの搬送、さらにはカートを牽引させてリネン類を運ぶなど、病院内の多彩な搬送作業をこなせる多目的搬送ロボットにする構想を描いています。
今回、病院内の薬剤部において、パナソニックはロボット群による業務アシストを提案しました。このロボット群は、現在も実際の病院にて元気に働いており、薬剤業務の補助として活躍中です。結果、薬剤師の方々、時間を薬剤の取り揃え、搬送業務から、患者様への服薬指導等に業務シフトができています。 パナソニックは、錠剤鑑査支援ロボットや注射薬混合ロボットなども開発しており、薬剤業務全体のプロセスに応じた業務支援ロボットを提供していくと共に、病棟や外来における作業支援や看護支援など、より人との繋がりを意識した病院業務全体のアシストを行っていくロボット群の開発を進め、病院のスタッフの方々、患者様ともに優しい、安全・安心の病院へのソリューション構築を目指します。