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Special Award for Social Contribution社会貢献特別賞 公共・フロンティアロボット部門

原発対応ロボット「Quince/Rosemary」

[千葉工業大学]

原発対応ロボット「Quince/Rosemary」

概要

東京電力福島第一原子力発電所事故の収束及び今後の廃止措置に向けた作業に導入されているモニタリングロボット。高い走行性能によって様々な条件の段差や階段に対応し、現地の状況に合わせて通信方法や操縦性に改良を加えられている。

評価のポイント

ロボットを現場に導入するために必要な現場作業ニーズとの擦り合わせや操縦者の訓練などを積極的に行い、長期間にわたって有効に活用されている点が評価された。

原発対応ロボットで大きく社会貢献

原発対応版Quince 1号機の開発

2011年3月11日、東北地方を前例の無い巨大地震と津波が 襲いました。福島県にある東京電力福島第一原子力発電所も大き な損傷を受けました。一刻を争う事態の一方、強い放射線にさらさ れて内部の探査も困難を極める状況で、ロボットの投入が計画され ました。レスキューロボットで実績のあった千葉工業大学も打診を 受け、急遽、期待されるミッションを発電所建屋内の階段や通路等 の条件のもとで実現できるロボットの開発に取り掛かりました。今回用いられたロボットは、既存のQuinceをベースにしたもの ですが、東京電力から要請されたさまざまな観測のために必要と なる多数の機器を積んだ状態でも、狭い通路の通過、急斜度の階 段の昇降ができるように走行性能が強化されました。通信も確実 な有線で行うことにしました。搭載された観測機器は、水位計、カメ ラ(前方用、後方用、俯瞰用など多数)、線量計、温度計、湿度計、お よび通信・水位計ケーブルの巻取り器などです。これらを新たに搭 載したため総重量の増加に加え、斜面走行でバランスを崩しやす い恐れがあることから、サブクローラ先端に着けたカウンターウェ イトを利用した動的バランス機能も開発しました。また、階段昇降 において特に有効な手段として、クローラベルトのピッチ・高さを、 同発電所内の階段に合 わせ最適化することで、 踏み面の状態が良い場 合には最大60度、踏み 面エッジ部が丸みを帯 びていたり、濡れている 場合でも45度までの上 り下りを実現できました。

ロボット開発、訓練・運用試験の様子

ロボット開発、訓練・運用試験の様子

活動開始/操作インタフェースの工夫

完成した1号機は6月20日に千葉工大を出発して福島に向かい、 作業が始まりました。最初に予定していた地下の汚水サンプリング こそできませんでしたが、2号建屋2、3階のダストサンプリング、3 号建屋2階スプレー冷却系の保全状態調査、2、3号建屋1階詳細な 線量測定と写真撮影など行いました。この成果は冷温停止のための 作業計画に必要な重要なデータであり、大きな貢献となりました。そして、10月20日には、2号建屋1~5階の線量分布測定や5 階燃料プールの撮影に成功しました。唯一このQuinceだけが強力 な走行性能により、上階に上がって行けたからでした。なお、この探 索の帰路、3階でケーブルの破断事故がおき、1号機は帰れなくな ってしまいました。

原子力発電所の作業員はこれまでにロボットの操縦経験もなく、 さらに放射性物質から身を守るための全身防護服を着け、とくに手 袋を三重にしているなど動作的な面での拘束も考慮した操作イン タフェースとする必要がありました。ロボットの姿勢をグラフィクス で表示し、ロボットの傾き状態、サブクローラの開閉状態を直感的 に把握できるようにしたり、狭い通路での方向変換が困難なことか ら進行方向逆転モードを備え、合わせて前方モニタカメラ画像が 操縦画面の中で自動的に中央に入れ替わるようにしました。これに より、移動ロボットの操縦に不慣れな作業員でもスムーズな操縦が できるようになりました。手先が自由に動かせない点については、 各種ボタンの大きさなど詳細なチューニングを行いました。

2011年10月20日に行われた2号建屋、1~5階の探索

2011年10月20日に行われた2号建屋、1~5階の探索

操縦訓練と運用試験/後継機の開発

開発された「原発対応版Quince」を提供するにあたっては、キャ ンパス内に原発建屋内環境を模擬したモックアップフィールドを構 築し、ロボット搭載のカメラのみによる遠隔操縦、外部照明の存在しない暗闇での操縦、高温多湿を模擬した環境での操縦、原子炉 建屋内階段を再現した狭隘空間にて水位計を投下する操縦訓練な ど、作業員を対象に実ミッションを想定した訓練を行いました。これ は受け入れ側として運用上の問題がないか、受け入れ可能かとい う試験でもありました。このような密なやり取りが今回の成功の伴だったと考えています。

1号機の使用経験を元に、次のミッションに向け、さまざまな改良 を加えた2,3号機が開発されました。ケーブル巻き取り装置の改良 や、有線・無線の併用によりケーブルの破断事故にも対応できるよ うにしました。この2,3号機は2月20日に千葉工大から福島におく られ、現在に至るまでさまざまな調査に使われています。6月には再び2号建屋1~5階の探査を行い、燃料プールの鮮明 な撮影にも成功しました。

さまざまな改良が施されたQuince 2,3号機

さまざまな改良が施されたQuince 2,3号機

より強化した後継機としてRosemaryが開発されています。外 形的にはQuinceと変わりませんが、走行性能、稼働時間、積載重 量を増強、またプラグイン充電方式を取り入れることで電池交換時 の二次的被曝を低減できるようにしたもので、さらなる活躍が期待 されています。 さまざまなセンサを搭載した1号機 (一部の画像はTEPCOホームページ掲載のもの)

改良された2,3号機による燃料プールの撮影

改良された2,3号機による燃料プールの撮影

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