ロボットによるビルの清掃システム
[富士重工業株式会社 住友商事株式会社]
概要
エレベータを有する、主に高層ビルに用いられる自律式清掃ロボット及びそのロボットによるエレベータ操作システム。ロボットがエレベータを操作して自ら複数階を移動し、清掃作業を行う。作業後は自らスタート位置に戻る。本システムは既に事業化しており、晴海トリトンスクエア、六本木ヒルズ等10棟近くの高層ビルに導入されている。
評価のポイント
高層ビルや空港などへのニーズが広がる/複数階を移動し、低コスト化と作業効率をアップ
我が国の少子高齢化は世界一のスピードで進み、1999年には 労働力人口が減少に転じ、総人口も2004年5月に前年比マイナ スとなり、人口減少時代に突入した。その反面、いわゆる3Kと呼ば れる職種は敬遠される傾向にあり、特にビルの清掃サービス業に おいては、清掃時間が終業後の深夜や出勤前早朝の場合がほとん どでもあり、作業者の確保がすでに困難となりつつある。 屋内型清掃ロボットは、既に事業化に成功しており、晴海トリトン スクエア、六本木ヒルズ、新宿Lタワーなどの10棟近くの高層ビ ル、中部国際空港などに導入されている。最初の導入からすでに5年が経過し、順調にロボット清掃を行っている高層ビルもある。 清掃ロボットが一般のエレベータに乗降するために、東京都庁 建築指導課によるエレベータの安全確認審査と同様の審査を受け ることが必要となり、東京都に行政指導を求め、建築指導課の審査 を受けて合格し、公的に認められた。
ビルの清掃作業は、 通常朝の8時から2時間程度と限られてい る。夜間にロボットが廊下等を清掃することにより、早朝は他の作 業ができ、効率化が図れる。 また、夜間の照明や空調無しでの清掃 作業が可能なため、1フロア当りの蛍光灯は40Wで200本、空調 20kWの省エネを実現している。 また、ビルに存在するエレベータの機能を利用し、1台のロボッ トが複数階で作業することでコスト低減に成功している。清掃コス トは1ヶ月、1平方メートル当りのカーペットで人では約100円、ロ ボットでは20階、5000㎡以上のビルでは約50円であり、ロボッ トがコスト的にも有利となる。 ロボットは、人と違って手を抜くことがなく、清掃品質が一定とな ることも大きなメリットである。 富士重工業では、大手ビルメン会社と業務提携を行い、床面積 の大きなビルを専門に清掃するロボットを使用したビルメンテナンス会社を設立した。ロボット台数は最大60台、平成18年10月より順次納入を開始している。
エレベータ制御の確立と安定した走行性
本清掃ロボットは、車体の円形形状、直進、スピンターンを基本と した走行方式による機構の簡略化、センサ数の削減、任意の位置 から詳細な地図情報なしの清掃走行、特にジャイロ角度誤差補正による直進性能等の特徴を持つ。
新築ビルではロボットとエレベータに設置された光伝送装置の 通信を用い、人間がエレベータのボタンを押し、乗降するのと同様 の乗降方法と制御方法を実現している。既存ビルではロボット清 掃時に操作ボタンにプッシュ型アクチュエータ盤を取付け、PHS 通信網を利用したロボットからのデータ通信によりアクチュエータ を可動させ、エレベータを操作する2つの方式を確立した。 光伝送方式は、大手5社のエレベータメーカについて共通化を 図った。その5社が参入した六本木ヒルズでは実際にロボットによ るエレベータ操作システム運用している。
ジャイロとサーボモータを組み合わせた制御則を確立し、日、米、 英、独で特許を取得している。
実用化へ向けた開発・導入のポイント
従来、階床間を移動できないロボットをオフィスビルなどで利用 しようとすれば、基本的に1フロアに1台となり、余程に大きなフロ ア面積を有しない限り、ロボットのコストが過大となって商業的に 成立しない。歩行ロボットならば階段の昇降も可能であるが、構造や制御が 複雑なわりに本来の清掃を実行するにあたり実用性に乏しいケー スが多い。
実用性が高い車輪型ロボットを用い、階床間を自由に移動でき る手段を追加することで、ビル内に於ける清掃ロボットの商業化を 成立させることを目的とした。
導入に際しては、清掃ロボット、清掃ロボットとエレベータ連動シ ステム、エレベータ運転システムの3つの要求仕様を満足する必 要があり、以下の内容の開発調整に苦労したが、導入先との綿密 な共同作業により導入を現実のものとすることができた。 (1)清掃ロボットにおける要求仕様 ・ソフトウェアの工夫と走行時のセンサの利用により、ロボットの自 律性及び作業者が簡便に任意の清掃エリアを設定できる操作性と 自由度 ・作業者と使用環境を考慮した小型化 ・ジャイロを用いた走行制御による長時間の安定した走行性能の 確保 ・センサを用いた障害物検出と故障・異常検知を考慮した制御シス テム設計による安全性確保(2)清掃ロボットとエレベータ連動システムにおける要求仕様 ・清掃ロボット自身が現在どこの階にいるかを認識し、エレベータを 呼び出して乗降し、自律的に各階の移動をする。 ・作業を行わない階がある場合や作業を再開する場合にも容易に 対処できる。(3)運転システムにおける要求仕様 ・ロボットが主導権を持った運転が可能 ・建物運営管理者がエレベータ監視盤でロボットの状態や清掃作 業の監視を行え、異常発生を検出できる。 ・既存のエレベータにも本システムの導入が容易なるようにエレ ベータ制御装置に必要となる改造は最小限にする。 ・ロボットが自動乗降することでも、安全性、信頼性の面でエレベータ の整備、運用に関する行政的条件を満たすようにする。