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Special Jury Prize審査委員特別賞 サービスロボット部門

食の安心・安全に貢献する田植えロボット

[独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター]

食の安心・安全に貢献する田植えロボット

概要

高精度GPSと姿勢計測装置等により、予め水田形状をGPS計測して設定した作業経路に沿って田植えを行うロボット。30アールの水田でのノンストップ完全無人田植え作業を約50分で完了できる。栽培時の施肥や農薬散布など、使用場所や量が容易に記録でき、食の安全・安心の確保への貢献や、農業就業者の高齢化・減少に対応し、食料自給率向上への貢献が期待される。

評価のポイント

無人で田植え作業が可能

田植え作業は、昭和40年代後半に我が国独自の苗マットを 使用した小型田植機が実用化され、それまでの人力での腰を かがめて行うつらい作業から解放されました。それから40年 の間、計測・制御機器の進歩により、多条化、高速化、各部の自 動制御が進みましたが、無人作業は夢でした。田植えロボット は、高精度GPSによる正確な位置情報と姿勢計測装置等の データを使用し、コンピュータで判断・制御することにより、自 律走行による無人田植えを行うロボットです。田植えロボット は、市販の6条植え乗用田植機をベースとして製作しました。作業は、予めGPSで計測した水田の形状に合わせて設定し た作業経路に沿って行います。田植えロボットの位置計測は、 VRS(仮想基準点)方式のネットワーク型RTKGPSにより ±3cmの精度を確保しています。自律走行は、FOG姿勢計測 装置により機体の傾き(ロール、ピッチ)と進行方向(ヨー)を 計測しながら、設定した作業経路からの偏差を最少にするス テアリング操作、HSTによる前後進、車速の制御を行うととも に、植え付け部の昇降と植え付けのON/OFFを制御します。 直線植え付け作業と枕地旋回を組み合わせて30アール(30 m×100m)水田でのノンストップ完全無人田植え作業を約50分で完了できます。走行経路を工夫することで水田の 隅々まで残すことなく植え付けることができ、植え付け位置 精度は±10cmです。水田というぬかるんだ場所で自律作業 できる農作業ロボットは世界で本機のみです。なお、田植機に 搭載する苗は一般に使われる苗マットの10枚分に相当する6 mのロングマット苗を用います。これも農研機構・中央農研が 開発した技術で、水耕により軽量でコンパクトな長尺ロール 苗を作ります。これにより30アール水田なら作業途中での苗 補給の必要がなくなり、完全無人作業が可能となりました。

無人で田植え作業が可能

日本の農業を支える農作業ロボット

日本の農業が自給率を向上させ国際競争力のある農業生産 技術を持つためには、担い手の減少と高齢化、さらに面的集 積が不十分な分散した水田などの悪条件を克服する必要が あります。このために、農研機構では、一人の作業者が複数の ロボットを管理して、労働生産性を格段に向上させるロボット 農作業システムの開発に取り組んでいます。その中の1つが この田植えロボットです。高価なGPS、FOG並びに制御装置 を用いているため実用化に向けてはコストの低減が課題とな りますが、農作業体系全体での解決法を検討しています。例 えば、水稲栽培では耕うん・代かき、田植え、防除、追肥、収穫 など多くの作業が必要です。図に示したように田植えロボット はCANバスでGPS、FOG、コンピュータとアクチュエータを 接続しています。そこで、統一した通信プロトコルを、耕うん、 収穫など他の農作業ロボットと共通して用いることにより、高 価なGPS、FOG、コンピュータ等を共用できます。このよう に、農作業体系全体で高価な機器を活用することにより、ロ ボットコストを低減させたいと考えています。農研機構ではプ ロジェクト研究「農作業ロボット」を2008年から開始してお り、この田植えロボットのみならず、トラクタ、コンバインも同 じシステムで動作させるように現在、研究中です。また、無人 作業実用化のために必要なもう一つの技術である安全性を 確保するための研究も同時に行っています。

食の安全、安心の確保に向けて

最近の食品偽装等の問題に端を発して、国民の食品に関する 安全、安心への関心は非常に高いものがあります。作物の生 産段階からの作業履歴、栽培時の施肥や農薬散布等の情報 を記録、保管、管理して、これらを消費者に開示することが安 心・安全に繋がります。農作業ロボットは作業を始める前段階 から水田毎の作業日時、作業内容などのスケジューリングを 行う必要がありますので、施肥や農薬散布などの使用場所、 使用量の情報が容易に記録、蓄積できます。さらに、労働生産 性を高め、食料自給率向上に寄与することが本質的に食の安 全、安心に通じると考えています。様々なデモンストレーショ ンを通して、子供達には明るく楽しい未来ある農業を実感し てもらい、将来の農業担い手の確保の一助になれるよう、ま た、真剣に労働コストの削減を目指す生産者からの熱い要望 を受け止め、さらに開発を進めていきたいと考えています。最後にこの田植えロボットの製作に当たり株式会社クボタ、 並びに、株式会社大成工機の協力を得ました。ここに記して謝 意を表します。

農家と小学生に田植えロボットの実演

農家と小学生に田植えロボットの実演

田植えロボットを小学生に説明

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