災害現場で活躍する「次世代無人化施工システム」
[鹿島建設株式会社 株式会社熊谷組]
概要
有人での復旧作業が困難な大規模災害現場において、建設機械等を遠隔操作して工事を行うシステム。2011年、東京電力福島第一原子力発電所での瓦礫撤去や、台風12号による奈良県の天然ダム対策等において、迅速に施工システムを構築して対応した。
評価のポイント
遠隔操作システムやオペレータの状況を常に把握し、また、運用のたびにシステムのブラッシュアップやオペレータの教育を行うことで、現場に即導入できる体制を敷いている。海外製ロボットに先行して、東京電力福島第一原子力発電所事故に対応できた要因がここにあり、事故対応での高い実績に加え、こうした普段から技術を維持する姿勢が評価された。
災害現場で活躍する「次世代無人化施工システム」
通信システム/システム監視プログラム
福島第一原子力発電所の3号機原子炉建屋上部瓦礫撤去工事では、 合計10台の建設機械を同時に遠隔操作することで、危険な区域に立 ち入ることなく瓦礫の撤去工事を進めています。この工事では、多数の建設機械に設置された合計52台のカメラ映 像信号を、遠隔操作室に時間遅延なく確実に無線伝送する必要がある ことから、高出力かつ伝送容量に優れる5GHz帯無線伝送システムを 採用しました。しかし、5GHz帯の電波は指向性が強いため、建設機械 のような移動体に適用すると、障害物による伝送障害を発生しやすい という弱点があります。そこで、無線ネットワークをメッシュ状に構成し、障害が発生した移動無線局は、接続可能な基地局の中から最適な基地 局を自動検出し、自律的に接続を再構築する方式を採用しました。 本システムでは、個別の無線方式となる5GHz帯のカメラ映像信号 と429MHz帯の建設機械操作用信号をTCP/IP変換し、ひとつのネッ トワーク上で運営しています。建設機械、遠隔操作用カメラ、遠隔操作 機器など合計200台の機器から構成されたシステムにより、約500m 離れた遠隔操作室に全ての情報を一元集約させ、安全で確実な遠隔 操作を実現しています。
放射線下での無人化施工では、通信システムに障害が発生した場合、 施工箇所での調査は被曝リスクが高いものとなってしまいます。そこ で、遠隔操作室内で的確な原因究明ができるよう、IPアドレスを割り当 てた全ての機器にIPパケット送受信を自動実行する「ネットワーク疎通 確認プログラム」と無線端末の監視、制御を一元管理し、無線電波の電 界強度や伝送速度などの確認ができる「メッシュ型無線LAN監視プロ グラム」を採用しました。
3号機原子炉建屋周辺のネットワークシステム
遠隔燃料給油装置/開発後記
建屋の瓦礫解体撤去作業では、容易に建設機械が退避できないエリ アでの作業を効率的に進めるため、「遠隔燃料給油装置」を開発しました。 (特許出願済)遠隔操作されるクローラクレーンにて燃料給油タンクを揚重し、解体用機械に設けた ガイドに差し込むと、解体用 機械側の燃料給油口が自動 的に開き給油が開始される 構造で、給油状態監視と燃料 供給口の開閉機構は工夫を 凝らしたものとなっています。
3号機原子炉建屋周囲は放射線量が高く、有人による建設機械操作で は数倍の工期と莫大な被曝量が発生したであろうことに鑑みると、無人 化施工システムは非常に有効な手段であったと考えます。 3月11日の震災後、開発期間4ヶ月という短期間で全てのシステム 構築、実証実験、現場設置工事までを成し遂げることができたのは、建 設機械メーカーやネットワークシステムメーカーの全面的な協力があ ったからこそと感謝しています。 今後も、施工機械の自動化、無人化と有人による機械管理システム をバランスよく向上させていくことで、施工管理の安全性・合理化をよ り高めた、多様な無人化工法の展開を図ってまいります。
燃料供給装置モニター画面
概要/無人化設備の概要
本件は去年の台風12号で被災した奈良県 野迫川村北股地区の斜面崩壊災害復旧工事 の無人化施工事例です。当工事では頭部の 尾根部分は脆弱な土砂状地盤が分布して土 砂崩壊等の発生を抑えるため尾根頂部を掘 削により山全体を安定させる必要性がありま した。そして不安定な地質により建設機械作 業による2次災害の危険性もあることから無 人化施工が採用されました。
操作室は二次災害の危険性と砂防堰堤工事の障害の理由から安全 な旧北股小学校に設置しました。ここから無線基地局までは約1kmあり、無線で直接伝送するには困難であることから、この間を光ファイ バーケーブルを敷設、使用した統合ネットワーク無人化施工システムを 導入しました。 除根、掘削作業5000m3を油圧ショベル0.45m3、0.8m3、ブルド ーザ16t、キャリアダンプ10tの4台を使用して施工しました。
無人化設備概要
光ファイバーケーブルを使用した統合ネットワーク無人化施工システム(第4世代)/情報化施工システムの導入/開発後記
ファイバーケーブル使用は各機器がIPアドレスで管理され、建設機 械操作情報、現場カメラの映像情報、ガイダンスシステム情報を全て LAN化して伝送する第4世代のネットワーク無人化施工システムを日 本で初めて導入したことにより可能となりました。また無線基地局から 建設機械間は5GHz帯無線メッシュLANを使用しました。 当社の超長距離隔操作実証実験のノウハウを活かし、光ファイバー の敷設されている場所であれば、映像遅延も従来とは変わらず、距離 に関係なく安定して遠隔操作ができることが実証されました。
建設機械施工中は人が測量等で作業エリアに立入ることは危険で あります。そこで測量レスで掘削・敷均施工できる衛星測位システム GNSSを活用した油圧ショベルガイダンスシステムや設計断面に対し て自動的に排土板が動き敷き均しが可能になるブルドーザ排土板自動 制御システムを導入しました。予め航空測量等で得た地形情報に設計 情報を合わせた施工データを作ることにより、安全にかつ精度よく施 工が可能になりました。
全ての機器をIP化して1本の光ファイバーケーブルでシステム全体 のデータを伝送して安全に対応できることを実施工で実証できました。 操作室と建設機械間距離の制約も無くなり火山等の大規模災害への 対応など無人化施工導入の選択肢が大きく広がりました。 今後は災害対応を通じて広く社会に貢献できる技術として育成していきたいと思います。