物流現場の自動化を実現する「医薬品物流センター高度化ロボットシステム」
[東邦薬品株式会社/日本電気株式会社/株式会社ダイフク/株式会社 安川電機]
概要
評価のポイント
導入の背景とコンセプト
プロジェクトの取り組み/FA分野から物流分野へのチャレンジ
東邦薬品の物流センターは、医薬品という生命関連品を供給し ているため、正確性(Accuracy)、ロット管理(Traceability)、継 続性(Business Continuity Planning)を常に追求し続けてい ます。それは約10万軒あるお得意様に、医薬品を安全・安心な流通 形態でお届けしたいとの願いからであります。一方、社会環境に目 を向けると少子高齢化社会に突入し、労働力確保がむずかしい時 代に突入しつつあります。 埼玉物流センターは、これら社会的使命と社会環境変化にいち 早く対応するために、多品種少量配送の流通業界ではむずかしい と言われたロボット化に挑戦いたしました。ロボット化する工程を、 出荷形態の90%を占めるピース品のピッキングを主軸に、ケース ピッキング、ケースおよびオリコンのカゴ車積みにターゲットを絞り 構想をまとめ上げました。 その後、4社共同プロジェクトチームが、様々な課題をクリアしな がら、2013年12月に本格的な稼働を開始いたしました。
FA分野と物流分野では、取扱対象物(以下商品という)が多品種 に及ぶだけでなく、その特性も大きく異なります。一般的にFA分野 の商品は規格やサイズ、精度が同一ですが、物流分野の商品は同 一品目でも、たわみや膨らみによるサイズ違いが発生します。その 上、商品がダンボールのような素材で構成されるため強度も弱く、 ロボットの把持も困難を極めます。また1台のロボットが多数の商品(数千品目)をハンドリングする ため、様々な形状や柄などへの対応が必要とされる点、1回の処理 動作が数秒以内とスピード化が必要な点もFA分野と大きく異なっ ていました。これら商品の特性が、ロボット化を推進する上で、技術 的な大きな阻害要因となりましたが、プロジェクトチームがこれを 少しずつ克服していきました。
取扱対象物(ケース、ピース、ケース内状態)
物流分野対応の先進技術
1. ハンド構造およびロボットコントロール
今回の埼玉物流センターでは、数秒に1個という処理能力が要 求されるため、複数対象物に多用されるハンドチェンジャー方式の 採用が困難でした。そのため、同一ハンドで多数の品目をいかにハ ンドリングし、それをいかに安定的に高速搬送行なうかにターゲット を絞り、一から挑戦を行いました。 ① ハンド機構の開発 ・ ケース用: 対象物にあわせた可動(X,Y,Z)式ハンド ・ ピース用: 容器内異サイズ対応ハンド ② 速度コントロールの開発 クランプ(トルク値)や吸着力(真空圧)などの把持状態と対象物の重量・重心データをロボットコントローラにフィードバックした 三次元的な速度指令 これら技術対応により、商品の落下防止と、安定したハンドリング を実現させました。
2. ビジョンセンサー
今回のシステムは、同一ポジションに様々な形状・色・柄および曖 昧なサイズ(数mmから数cmの差)の商品が供給されます。また、 搬送中の商品の挙動(横転、転倒やズレなどの荷の挙動)も想定さ れました。これらの要因により確実な位置情報(X,Y,Z)の出力が非 常に困難な状況でした。そのため、位置情報データに間違いが発生 した場合(誤認識)に起こるロボットが商品に衝突するという可能性 を克服するために、以下の技術開発を行いました。 ① ハイブリッド式ビジョンセンサー ・ ケース用: ステレオ+パターン ・ ピース用: ステレオ+パターン+輪郭 ② 検出領域の再探索 画像処理にて一旦決定した値の確からしさをアップするため切 り出し領域の再探索を行ないスコア評価を組み込み。 以上の複数方式を併用することにより、位置情報についての精 度向上をはかりました。 なお、各ロボットには万一のことを想定してハンド側にセンサー を取り付け、ハード的な衝突回避機能も付加しています。
導入の成果/今後の展開
埼玉物流センターは今回応募したロボット化だけではなく、自 動認識技術も導入し自動化に挑戦しています。その結果、従来の 東邦薬品物流センターでは、人手作業の工程が12工程残ってい ましたが、当センターでは人手工程を5工程まで削減することが できました。 自動化の成果としては、同規模の従来物流センターより130名 少ない従業員で運用ができています。また、一人あたりの生産性も 77%アップし、ローコストオペレーション化を実現しています。 さらに、今年度の前半期の出荷精度実績は、人手工程を含めて も99.999986%と目標のセブン9まで手の届くところまで来て おり、正確性の追求にも大きく寄与しています。
埼玉物流センターは、稼働=ゴールではなく、パートナー企業と のプロジェクトを継続し、今もなお進化を続けています。ピース品 のロボットピッキング率は稼働当初50%でしたが、現在は63%と 自動化率をアップさせています。現在、商品を入れるトレイの多段 積み化にも成功し、さらにロボット化率をアップさせる取り組みが 進行中です。また、夜間のロボット運転にも積極的に取り組んでい ます。 一方、同センターは医薬品という生命関連品を取り扱っているた め、有事の時にもその供給を止めることはできません。そのため、 停電時に72時間稼働可能な自家発電装置を備えています。また、 地震や停電時の復旧作業を、従業員でスピーディに対応できるよ う常に訓練を繰り返しています。 今後も、当センターは正確性、ロット追跡性、継続性をさらに向上 するために、常に前に向かって成長・進化し、無限の可能性を追求していきたいと考えています。
おわりに
昨今、流通および物流機能そのものが、日常の生活はもちろん、 災害時も社会インフラとして、重要な使命を担っています。しかし、 流通・物流の業界に目を向けると、自動倉庫やコンベアを利用した 保管や搬送の自動化は多く見受けられますが、ピッキングや積み付 け作業は、未だ労働集約型の人手に頼った作業が主体となってい ます。今回の取り組みは、医薬品流通というひとつの分野ではあり ますが、少子高齢化問題など、業界の課題解決のひとつの糸口に なればと考えています。 また、これら取組みが今後、物流業界の持続的発展やロボット化 への進展、さらには日本発の新たな物流ソリューションとしてグロ ーバル化にも貢献できれば幸いだと考えています。