原発対応の小型遠隔除染装置 「RACCOON (ラクーン)」
[株式会社アトックス]
概要
評価のポイント
福島第一原発の円滑な廃炉に貢献する遠隔除染用ロボット
開発背景/装置の要件/RACCOONの開発、現場導入
東京電力福島第一原子力発電所は、平成23年3月11日の東日 本大震災により甚大な被害を受け、現在廃炉に向けた原子炉建屋 内の調査や補修などが計画されています。しかし、原子炉建屋内は 放射線量が非常に高く、作業員が建屋内に入域し、作業をすること は非常に難しい状況となっています。 そこで、線量の低いエリアから遠隔操作で原子炉建屋内の除染 作業を行う装置が求められています。 当社は事故直後より、原子炉建屋内の線量低減に向けて遠隔操 作で床面を除染する小型除染装置の開発に取り組んできました。
これまでに当社で培ってきた放射能汚染環境下での作業知見や 現場作業員の要望などを基に、以下の要件を開発装置に求めるこ ととしました。 ① 原子炉建屋1階全域の床面除染を可能とするため、100m以 上の遠隔操作ができること ② 除染廃液を確実に回収し、100m以上離れた場所への移送、排 出ができること ③ 原子炉建屋内や周辺での人手による装置の搬入出が可能とな るように小型、軽量であること ④ 現場の汚染状況に合わせた除染ができること ⑤ メンテナンス時の作業員の被ばくを低減させるため、装置内への汚染の蓄積をできるだけ少なくすること ⑥ 原子炉建屋内でホース・ケーブルを円滑に牽引できること
上 記 の 要 件を踏まえた 装 置として 、小 型 遠 隔 除 染 装 置 “RACCOON”を開発しました。本装置は、除染ユニット、中継ユニッ ト、ホース・ケーブル牽引台車から構成されます。 高圧水によって床面を除染し、除染ユニット及び中継ユニットに 取り付けたエジェクタによって廃液の回収移送を行います。エジェ クタは内部構造がシンプルであり、汚染が蓄積しにくい上、高圧水 の供給だけで回収移送を行うことができるため、故障リスクを低減 できます。また、本装置は100m以上離れた場所からの遠隔操作 が可能です。 さらに、装置の設置、解体、遠隔操作などのトレーニングを重ね、 現場での円滑な運用を目指しました。 RACCOONは、2013年11月に福島第一2号機に導入され、 原子炉建屋1階の 除染を開始しまし た。本装置は、震 災 後 初めて原 子 炉建屋内の除染 を行った装置となりました。
福島第一2号機に導入されたRACCOON
RACCOONⅡの開発、現場導入
RACCOONの除染作業における経験と現場運用のノウハウを 反映させて、さらなる改良を加えたRACCOONⅡを開発しました。 本装置では、廃液回収移送方式をエジェクタからブロアに変更し ました。ブロアを使用することで、水の使用量を抑えられる上、ブロ アを建屋外に設置できるため監視が容易であり、各ユニットのさら なる省スペース化にも繋がりました。また、遠隔操作距離をさらに 伸ばすため、LAN回線を利用した遠隔操作を可能とし、操作者の被 ばくの低減を図りました。さらに、除染ヘッドに持ち上げ機構を追加 し、走破性を向上さ せました。 RACCOONⅡは、 2014年8月に福 島第一3号機に導 入され、原子炉建 屋1階の除染を開 始いたしました。
【RACCOONⅡの装置詳細】(除染ユニット/中継ユニット/ホース・ケーブル牽引台車)
除染ヘッドは、「ブラシヘッド」、「ジェットヘッド」、「散水・回収ヘッ ド」、「押しのけヘッド」の4種類とし、床面の放射性物質の汚染状況 に応じてヘッドを使い分けます。高線量下でのヘッド交換を想定し、 工具を使わずに容易に交換できる機構としました。 また、装置が小型であるため、配管の下や既設の盤の伱間など の狭隘部の除染も 可能です。さらに、軽 量であるため作業員 2人による運搬が可 能であり、緊急時の 装置の搬出も容易 に行えます。 構成部品はすべ て防水のため、除染 作業終了後に装置 の洗浄や拭き取りに よる除染が可能です
中継ユニットの役割は除染作業のサポートであり、搭載カメラで の建屋内の周辺監視や、走行部のメカナムホイールの前後左右斜 め方向への動きによるホース・ケーブルのコントロールと牽引補助 を行います。また、集音マイクとスピーカによって、緊急時に建屋内 の作業員へ指示を送ります。
除染装置には動力ケーブルの他に給水・排水用のホースを接続 する必要があります。本装置には長さ約100m、重さ約200kg分 のホース・ケーブルを接続するため、湾曲部を持たせたプレートを 連結し、床面とはキャスタで接する本台車を用いることで、原子炉 建屋内のコーナー部や干渉物及び床面との抵抗の低減を図りまし た。これにより、建屋内をスムーズに走行することが可能となり、作 業範囲の拡大とロボットへの駆動負荷の低減に繋がりました。また、 ホース・ケーブルを台車に積載することで表面の汚染を防止するこ とができました。
除染ヘッド
装置の操作/今後の展開/おわりに
除染ユニットと中継ユニットはそれぞれの操作者がカメラ映像を 確認しながらジョイスティックで操作します。操作者同士が緊密に 連携して遠隔除染作業を行います。さらに、タッチパネル盤によっ て水やエアの切り替え操作を行います。福島第一3号機は2号機と比較して全体の線量が高く、操作者の 被ばくが問題となりました。そこで、発電所内のLAN回線を利用し、 放射線量が低い免震重要棟からの遠隔操作を可能とすることで、 作業員の被ばく低減を図りました。
RACCOON及びRACCOONⅡの現場での作業経験や運用経 験を活かし、さらに安定した作業の実施が可能な装置へと改良を 進め、福島第一原発の廃炉作業の円滑な実施に貢献できるように 努めてまいります。
本装置の開発にあたり、ご協力いただいた製作メーカー、及び千 葉工業大学米田研究室へ感謝の意を表します。