農業用アシストスーツ
[国立大学法人和歌山大学/パワーアシストインターナショナル株式会社]
概要
農作業の現場に特化したアシストスーツで、収穫物の持ち上げや中腰姿勢の保持、斜面での移動などの負担を軽減させるほか、搭載している電動モータの出力を一定の範囲内に制限し、意図しないアシストが生じても装着者自身で対応できるよう配慮。
評価のポイント
現在まで実用化の努力を着実に続けており、開発姿勢には好感が持てるほか、ロボットとしても複雑すぎず、簡単にもなりすぎず、適度なシンプル化が行なわれており製品として成立し得るものであると期待される点を評価。
農業用アシストスーツ
はじめに
日本の農業においては、後継者不足から少子高齢化が急速に進 んでいます。一方農業従事者は30kgの玄米袋や20kgの収穫物 などの重い荷物を持ち上げて運搬する作業、長時間深く斜めにしゃ がみこんだ中腰作業、ミカン栽培地などの急傾斜での移動が多く、 農業従事者は、腰痛を患っている方が多くいらっしゃいます。 そこで高齢の農家を手助けし、力の弱い若者や女性が農業へ参 入し易くするため、例えば20kgの果物などの収穫物の持ち上げ作 業において10kg分をアシストすること、長時間の中腰作業での姿 勢保持のアシスト、急傾斜地での歩行をアシストすることにより、労 働寿命の長寿化、力の弱い若者や女性の参入が期待されています。
研究開発の内容
和歌山大学では、平成22年度から農林水産省の研究プロジェク トにて農業用アシストスーツを開発し、まず和歌山県の有田ミカン 農家にて現地実証試験を繰り返し行い、ユーザーニーズにもとづい て改良を重ねてきました。その結果「作業の負担が全然違う。」「しっ かりと腰を支えてくれるので安心して作業できる。」「バランスも 整っているし実用的になった。」との意見をいただきました。 平成26年度には、和歌山県以外にも神奈川県、香川県、徳島県、 山口県、大分県の5県にて現地実証試験を実施し、より多くのニー ズを聴取し実用化のための試作改良研究を行いました。具体的に は、和歌山県ではミカンの収穫作業、神奈川県ではキャベツや大根 の収穫や玄米袋の積み上げ作業、香川県ではミカンやキウイの収 穫コンテナの積み上げや積み下ろし作業、徳島県ではレンコンや甘 藷や人参の収穫作業、山口県ではジャガイモの収穫コンテナの積 み上げや積み下ろし作業、大分県ではシイタケの栽培作業におい て、現地実証試験を実施しました。 平成27年度には全国13県で100台の現地実証試験を実施し 全国の農家やJAのニーズを聴取して、さらに実用化に近づけてきた。アシストスーツを一人で着脱しやすいようにし、さらに装着者と アシストスーツとの接触部の密着性や親和性を改善することにより、 アシスト力発生時の装着者への衝撃力を緩和し、よりスムーズなア シストを実現しました。 なお、バッテリも含めて全質量7kg以下と軽量で、屋外の不整地に 対応でき、連続2~3時間 使用可能なバッテリ駆動 の実用的な電動式アシストスーツの実用機を実現しました。着衣した上から長 時間の装着ができ、着脱 容易で拘束力の強くない 装着方法を実現しました。 そして装着者の持ち上げや中腰や歩行の動作意図 推定を向上させ、装着者が出そうとしている関節トルクの推定精度を向上さ せ、よりスムーズで適正なアシストを実現しました。
装着したアシストスーツ
まとめ
和歌山大学のアシストスーツは、大学発ベンチャーであるパワーアシ ストインターナショナル(株)にて、製造販売します。まず農業者の負担を 軽減し、高齢化する日本農業を支える役割を担いたいと考えています。 さらに電動アシスト自転車が「高齢者や女性の足」となって普及している ように、このアシストスーツが「高齢者や女性の腰」となり、農業から物流 業や建設業等は勿論のこと介護や日常生活においても広く普及させて いきたいです。近い将来には、「人類を重労働から解放する」ことにより、 日本から全世界の高齢化社会を支えることに貢献したいと考えています。